田原啓江のウラナミ『感性を信じる』

田原啓江

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田原 啓江 / こんにちは。プロサーファーの田原啓江です。千葉南の波情報を担当しています。ウラナミではプライベートなことはもとより、サーフィンや海外遠征、トリップのことなど満載してお届けしたいと思います☆

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こんにちは。田原啓江です。

夏らしくなって、海がますます楽しい季節になりました。
最近の千葉南は地形が安定してきて、この時期特有の南風の合う千歳・千倉をはじめとして、北寄りのマルキ、白渚、花篭前の地形も良く、梅雨時期の波のないコンデションでも潮回りで十分遊べる日が続いています。

波情報の朝も日の出が早まり、露の降りた新緑が美しさを増す心地よいスタート。
生命力にあふれた静かな未踏の朝を、ひとり占めする楽しみ。
波情報は日一日の波や風の変化だけでなく、移り変わる季節の変化のなかで、自分の五感や感性を養える私の好きな仕事です。
波情報も、概況や数値予測に反して実際の波の状況が違うこともあります。
現場の少しの変化も見逃さない目や、感性。自分の感覚を信じる自信が仕事には必要な気がします。

その感性や感覚についてのお話です。
今期、私はシーズンインとともに何故か膝に水が溜まるようになり、古傷の半月板が悪くなりはじめ、スポーツアドバイザー兼整体師の方に身体を診て頂いたときのお話です。
大幅なサーフィン・スタイルの改革に努めていた私への言葉は、トレーニング内容の変更や体作りのアドバイスではなく
「そもそも。何故、スタイル変革に取り組んだのか?」という、拍子抜けしたもの。
新しいスポンサーに出会い、新しい土地でサーフィンができるのだから……私も新しい自分になろうと沸きあがった自然な思い。
もちろん新しい出会いの中で、いっぱいの意見やアイディアを頂く機会が増え、それに沿った変換のつもりでした。

はい!と従う従順なところ。
一生懸命頑張るところ。
多分に漏れず私もそうであるように、日本人特有の美点ですが裏目に出れば欠点です(笑)

一般的に、一流プロスポーツ選手は「わがまま」だと言われています。
イチローは、ストレッチをしただけでマウンドから引きあげてしまうこともあるそうです。
野茂投手は、日本でさんざん「変な投げ方を直せ」とコーチに言われても無視したそうです。
多くの指導者との出会いや試行錯誤のなかで、間違えた選択で致命的な故障をして選手生命を絶たれることなく活躍できる重要な資質に、自分の感覚を信じる感性に長けていることが挙げられるそうです。
要は、自分の感覚やスタイルを信じる自信や強さです。
常に研ぎ澄まされたその感覚は、時に「わがまま」に映りますが、一流の人間が持つ「自分自身を知り尽くす繊細さと敏感さを要する鍛錬」の上に築かれたもの。

人は案外、自分自身のことすら良く分かっていません(笑)
自分の答えすら自分でみつけられない。
そして、なんでも従うということは時には他人任せで無責任。
すなわち、知ることへの努力を怠っています。

もしかしたら、インターネットのレビューは本当ではないかもしれない。
自分には当てはまらないことかもしれない。
安易に受けるサーフ・コーチも、もしかしたら……自分に合ったものではないかもしれない!?

そして今回。私個人としては、長年続けてきた自分のスタイルや感性に自信が持てず、流されたことを反省する機会になりました。プロ選手としては、怠慢なこと。
願わくは、自分のことは自分が一番良くわかる感性を持ち合わせた選手になりたい。
必要なものや自分に合ったものを、迷いなくサッと選びたい。

自分の感性を信じて進むことは、時として周囲との摩擦も起きるかもしれないし、それだけの責任や自信がないと出来ないことです。
でも溢れる情報のなかで、自分自身の良き舵取りのために必要なことは、そんな感性ではないでしょうか?

サーフィンに限らず、生活全般にいえること。
社長さんなら、会社の舵取りもそう。
全てのことに当てはまる大切なキーワードになりそうです。
そんなことを感じたプロ生活14年目のシーズンイン。
たかがコンペ。……結果が全ての世界ではありますが、その探求の道は、私にとって多くの新しい出来事や出合いに彩られた楽しい探求の道になりました。
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今シーズンも、やはり新しい1年になることを期待しています。
良い笑顔を見せられるシーズンにしたいと思います。
田原啓江

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