☆加藤のウラナミ『急激なサイズアップと冷静だったクールなプロサーファーVol.2』

☆加藤

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☆加藤:会社代表であり、波乗りと海が大好きな50代サーファーです。子どもたちに安心安全な海を残すことと、島国などへ高精細な気象情報を提供することを残る人生のライフワークにしました。サーフトリップネタが多くなりますがお付き合いいただければ幸いです。よろしくお願いします。

外洋波浪図のサンプル

レジェンドが、2ピースの真っ赤なガンのテール側につかまり、落ち着いてパドルバックしようとしているのを見て少し安心しました。私が駆け付ける前に、その異変に気が付いた東京からいつも通ってくるプロサーファーのN君が真っ先に駆け寄って、『大丈夫ですか?一緒にパドルバックしましょう。』と声を掛けてくれた模様で、他にも2人くらいのサーファーがサポートにつき、一塊(ひとかたまり)になって岸を目指すことになりました。しかし、潮が逆のようで、中々行きたい方向に進まない様子でした。

その様子を見ていた私は、早く海から上がって岸にいるT氏らに告げることと、場合によってはロングボードを借りて自分のボードを引っ張りながらパドルバックして、ロングボードを差し出すことを考えて速攻で岸を目指しました。
小さな丘の上のあるレストランでT夫婦らと合流して、すぐにアクシデントの様子を伝えました。また、その後も丘から見守っていると、少しずつではありますが岸に近づいているのが伺うことができました。
結局、2ピースになってから30分くらいは掛かったでしょうか、レジェンドはかなり疲れたとは思いますが、Nプロやサポートのサーファーに励まされながら無事に生還を果たしました。

急激なサイズアップにより、サーフボードが折れたり、リーシュを切ってしまったサーファーをレスキューするのはとても難しいことです。しかし、プロサーファーのN氏が真っ先にレジェンドに駆けつけて声を掛けて勇気づけたように、まずは駆け寄って安心させる行為がとても大切であることを再確認させて頂きました。

1.STOP、まずは立ち止まって落ち着き
2.THINK、冷静に解決策を考えて
3.ACTION、それからレスキュー活動を展開する

Rescue時における大切な三要素は、ライフセービングの不変の教えですが、陸を含めたどのようなアクシデントのときにも適用することができます。
海で人の身体は、肺に空気を少し入れさえすれば、必ず浮きます。
しかし、パニックになった人は、慌てて顔を水面から上げて息を吸おうとするから、逆に重力がかかって沈んでしまいます。慌てずに仰向け(あおむけ)になって、肺に空気を少し入れさえすれば、誰でも浮きながら呼吸することができます。少し手で身体の両側の水を後ろに押せば、移動することもできます。形はスマートではないものの、この呼吸しながら移動するという行為は、“泳げている”ということなのです。
緊急時に誰でもセルフレスキューできるこの泳法を、“エレメンタリーバックストローク”と呼びます。ぜひ、平常心の時や、波待ちの間に体験して身につけておいてください。
ウェットを着ていれば、さらに浮力が得られて浮きやすいので移動もしやすくなります。
この状態で、セットの波が来たら潜ってかわし、スープを利用してボディーサーフィンをしながら岸を目指せば、かなり早く岸に辿り着くことができます。
とにかく一番大切なのは、落ち着くということです。

最後に、台風接近時の今回のような急激なサイズアップの時には、冒頭の波浪図を見れば予想されています。サイズが一気に2倍、3倍、4倍とアップしてくるということです。
波浪図に示されている波高は、中心に向かって一気に高くなります。
1m、2m、3m、4m、5m、6m、7m、8m……。そのうえで、100波に1回は1.6倍、1000波に1回は1.9倍のお化けセットが入ってくることが統計的に証明されています。台風の中心の直撃を受けなくても、仮に波浪図では4mだとしたら、1.9倍は7.6mのお化けセットが入ってくるのが想定内だということです。
レジェンドが食らったのは、7.6mくらいのお化けセットだったのかもしれません。

まだまだ続く2015台風スウェル、もしもアクシデントがあっても、とにかく落ち着いて、必ず生還してください。また、他のサーファーのアクシデントに気が付いたら、周囲のサーファーは勇気づけとサポートを協力し合って、絶対に事故を未然に防ぎましょう。
海でのアクシデントは、皆で助け合うのが世界共通の尊い教えですからね。
我らサーファーのEndless Summerは続きますが、今年はエルニーニョの年なので異常気象は想定内です。大いに台風スウェルのサーフィンをエンジョイしながらも、事故なく今年が終えられるように十分注意しましょう。(了)

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