毎号『THE SURFER’S JOURNAL日本版 』を楽しみに読ませて頂いていますが、最新号23.3(日本版4.3)』は傑作であり、その中でも「Directional Shift」はとても興味深く読ませて頂きました。
かつて競い合ったライバルたちが、いま邂逅(かいこう)する。トム・カレン、マーク・オキルーポ、ゲーリー・エルカートンのインドネシアでの再会の旅……
我々50歳代にとって三人全員がサーフスターでしたが、その彼らがワールドチャンピオンにしのぎを削っていた80年代は、ライバルと友情関係などは生まれず、ましてやハワイVSオーストラリア、アメリカVSオーストラリアという出身選手によるファイナルともなれば、その国のサーフィン界とサーファーの威信を賭けた戦いでもあり、応援を含めて熾烈を極めていました。
インド洋上のサーフボートの中で、カレン、オッキー、コングが異口同音に語るのは、いまのASP WCTの選手同士が、みなとても仲が良いことが信じられないということです。
「いまのサーファーを見ているとみんなで仲良く集まって、お互いの背中を叩いて励まし合ったりしている。当時の自分にはそんな余裕はまったくなかった。それがいいとか悪いとかを言っているんじゃないよ。ただ、もって闘争心が強かったんだと思う…..」(コング)、「いまはとてもいい友達なのが不思議だ…..」(オッキー)、「たぶん、競い合う気持ちが強かったんだと思うな…..」(カレン)
(続きは同JOURNALで)
80年代、部原や新島で毎年開催されたWCTの丸井プロの深夜放送されたTV特別番組を食い入るように見ていましたが、国を超えて仲良しだった選手は、たまたまスポンサードされるサーフボードメーカーが一緒だったり、ごく一部に限られていた印象です。
今朝ASP WCTの『BILLABONG TAHITI 』のインターネットライブ中継を見ました。ライブとは思えないきれいな高画質、またPWCや水中カメラマンからの映像もライブで見られるようになるとは、80年代には想像すらつきませんでした。また解説者として、カッコ良く登場していたオッキーの姿も。(笑)
JOURNALを読んだあとに同ライブを見て感じたのは、80年代のヒートのように、いかにも闘志むき出しで相手を威嚇するようなことは今の選手には一切なく、みな紳士的に相手をリスペクトし、自分のパフォーマンスに集中している様子でした。JOURNALのレジェンド3人が語ったように、選手同士が真のプロアスリーツとして紳士的に振舞い、しかもチャージするところはチョープーへのバレルの中を狙う神業的なテイクオフとハイパフォーマンスを発揮して、見ていて感動的であり、また心地良いものでした。
ちょうどR2では、ハワイアンのJHONJHONに対して、大きく点差をつけられたブラジリアンのMONTEIROは、まだ時間が少し残されていましたが、そのヒートの勝者を称えようと握手を求めてJHONJHONに近づき、温かくさらなる健闘を告げているかのようでした。
WCTプロに限らず、最近のサーファーの振舞いというかキャラクターは少しずつ変わってきていると思います。
かつてウラナミの中で、『波は奪い合うものではなく、分かち合うもの』というタイトルで、サーフライフに紹介されたフランス人サーフジャーナリストによる、同国の素晴らしいサーフカルチャーを紹介させて頂きました。皆で波を上手くシェアできれば、温かい空気がポイントに流れ、皆がハッピーになれます。
しかし、時々ポイントのリズムを狂わすかのように傍若無人に波に乗る人が現れて、がっかりすることがあります。ガツガツ波に乗り、パドルバックしてきたと思ったら、ピークに戻って次のセットを狙おうとする……(涙)
大磯が産んだビッグウェイバーで日本を代表するサーフレジェンドの一人でもあられた、亡き坂田道(おさむ)氏とは、2回海外にサーフトリップさせて頂きました。ロンボク・スンバにボートトリップしたときの事ですが、旅の終盤に寄ったロンボクのグルブックポイントには20名以上のサーファーが入っていて混雑していました。ひとりアウトで待つロングボーダーの坂田さんは、乗ろうと思えば多くのセットに乗れたはずですが、5分、10分経っても波に乗ろうとしません。結局、ごくたま~のセットを数本乗っただけで海から上がってしまいました。
あとで、なぜもっと波に乗らなかったのかと尋ねたところ、『だって、ロングはいつでも波に乗れるからね。混んでいる時は波をショートに譲らなきゃ……』
それを聞いた私は、さらに坂田さんが好きになったのは言うまでもありません。
ポイントが混雑していても温かい気持ちに包まれることはあるし、出来れば誰もがそうなりたいと心から願っているはずです。
湘南の某クラシカルポイントでは、最近こういうルールが出来たそうです。前乗りなど問題が発生しそうになったら、当事者ではなく、ショルダーで見ていた第三者のサーファーが問題を起こしたサーファーを注意しよう、と。とても良いルールだと思います。
サーフトリップなどで、仲間うちでポイントを貸し切りでサーフィンしたことは、とても楽しい想い出になるものです。しかし、たまたま一緒にサーフィンすることになった外国人を含めたサーファー同士が仲良くなることは、もっと素晴らしいことです。
かつてサーフした豪マンリー近くのリーフポイントは、1ピークでとても厳しい雰囲気!?でした。しかし、毎日サーフするためにショルダーに通い続けていたところ、4日目くらいに強面(こわもて)の地元サーファーから、『もっとピークに来いよ!!』と言われた時の感動は今でも良く覚えています。
ルール&マナーを守らない者は対象外ですが、9~10月と残された日本の台風シーズンにおいて、日本中で波を分かち合い、たまたま居合わせたサーファー同士でもリスペクトするサーフカルチャーがより醸成されることを心から祈りたいと思います。(了)